NMN摂取で期待される効果
NMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)はビタミンと似た働きをする栄養素の1つです。
抗老化のほか糖尿病、認知症、心不全の改善、さらには脂肪燃焼効率、骨密度の向上などが期待されているNMNとはどういったものなのでしょう。
NMN摂取の研究成果
「NMNをマウスに1年間投与したところ、顕著で広範な抗老化作用を示すことが明らかになった」と今井眞一郎教授(ワシントン大学医学部)らは報告しています。
さらには、2011年にはNMNが糖尿病の改善効果が期待できることが報告され、その後もアルツハイマーや心不全などの疾患への効果や脂肪燃焼効率の向上などが期待できることが報告されています。
研究報告されているNMNの体感
NMNを8週間にわたって摂取したときにどういった自覚的な変化があったかを調べた研究では、つぎのような変化があったことを報告しています。
✔ シミや小じわ、乾燥などの肌の改善
✔ 睡眠の質の改善
✔ 疲労回復や体力の向上
✔ 冷え性の改善
✔ 視力や目のアレルギー症状の改善
✔ 関節痛の軽減
高齢者のNMN摂取について
NMNは抗老化作用が期待されていることから、高齢者のNMN摂取についてもさかんに研究がおこなわれています。
2022年1月に発表された108名の高齢者を対象とした筑波大学の研究では、NMNの摂取が下肢の運動機能向上について効果が観察されたとしています。とくに午後にNMNを摂取することで下肢の運動機能向上に効果的である可能性が示唆されています。
筋力でいうと、NMNの経口摂取は、サルコペニアのような加齢にともなう筋力低下の予防に有効であることが示唆されその効果が期待されています。
12週間の経口摂取でNADと呼ばれる物質の血中濃度が上昇して、歩行速度、握力などの運動機能および聴力が改善することが報告されています。
寿命を伸ばすことのほか、健康寿命の延伸にも期待がよせられています。
NMNが注目されるようになったきっかけ
NMNに抗老化作用があり寿命をのばす可能性があることが世界的に注目されるようになったのは、つぎのような研究報告がきっかけの1つとなっています。
生後5カ月のマウスがその後1年間、NMNを摂取した場合の経過について研究がおこなわれました。
すると、人間でいうと60代に相当する17カ月齢でも、体の代謝が保たれて中年太りしないことが観察されました。活発に活動して、骨格筋、肝臓、脂肪に対して加齢にともなう遺伝子変化が抑えられるという抗老化効果がみられたと報告されています。
NMNを飲んだマウスは、飲まなかったマウスにくらべて、血糖値を下げるインスリン感受性が高く、加齢にともなって低下する目の網膜の機能、骨密度、免疫細胞の低下が抑えられるという抗老化効果が確認されたといいます。
また、アルツハイマー型認知症の研究では、NMNを10日間飲ませただけで認知機能が回復し、記憶に関連している脳の海馬という部分の細胞に回復がみられたことが報告されています。
NMNについて
NMNは、ニコチンアミド・モノヌクレオチドと呼ばれるビタミンのような働きをするものです。NMNは、人の体内で自然につくられているものでもあります。
ただし、体内でつくられるNMNの生成量は加齢にともなって減っていきます。中年期以降になるとピーク時の半分ほどしか生成しなくなるとされています。
NMNがわたしたちのカラダで合成される経路は、つぎのようになっています。
まず、脂肪が血中にNAMPT(ニコチンアミド・フォスフォリボシルトランスフェラーゼ)という酵素を分泌します。
このNAMPTがビタミンB3(ニコチンアミド)を材料にしてNMNを生成します。
そして、NMNがNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)に変換されます。
つまり、NAMPTによってビタミンB3がNMNになります。
そのNMNがNADに変換されます。
このNADが抗老化作用を示す研究報告があり、その効果が期待されています。
NADを体内でつくりだすための材料としてNMNを摂取することで、体内のNADを増やして、その効果を高められるのではないかと考えられています。
そのため、NMNを摂取することの作用がさかんに研究されています。
NADとサーチュイン
NMNが体内で変換されたNADは、サーチュイン遺伝子を活性化したり、ミトコンドリアに働きかけてエネルギーを生み出したりします。サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子や高老化遺伝子とも呼ばれています。サーチュイン遺伝子が活性化することで生物の寿命がのびるとされています。
老化や糖尿病、心血管疾患、がん、アルツハイマー病などの加齢にともなう疾患の発症には、体内にあるNADの濃度が密接に関連しているといわれています。こういったNADの働きによる寿命の延長や健康増進効果が期待されています。
いっぽうで、NMNを摂取することによって体内でそれがNADに変換されることが知られています。ですから、NMNを摂取して体内へ補充することでNADが増えて、抗老化作用などが期待できるのではないかと考えられるようになりました。そして、NMNの摂取に関する研究がさかんにおこなわれているというわけです。
参考文献
『Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical
parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese men』
『Clinical evaluation of changes in biomarkers by oral intake of NMN』
『ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善~超高齢化社会の課題“サルコペニア”の予防効果に期待~ (東京大学)』